cremes
  • January 15, 2015
  • diary

If I had a photograph of you

あのときの写真など一枚も残っていない。

ポータブルのトランジスタラジオでFENを聞きながら。

私たちはママチャリで旅に出た。

あれはいつ?高校生の夏休み?

藤沢市から館山市のユースホステルまで自転車で旅に出たのだ。

しかし地元藤沢市北部を出発してから、

藤沢駅にもたどり着く以前に、いきなりハプニングがあった。

田んぼの真ん中の一本道で、

不思議な自転車に乗ったヤンキーとすれ違った。

この写真の様な三輪の自転車である。

 

ちなみにこの写真はデンマークの三輪自転車だが、

当時そのヤンキーが、藤沢北部の農道でデンマークの三輪自転車に乗っていたとは考えにくい。

おそらく、自転車とリアカーを改造してドッキングさせたのだろう。

そこに男子高校生のママチャリが6台走って来ればそれは邪魔だっただろう。

細い農道でギリギリすれ違うとき。(リアカーは車幅が結構あるのだ!)

勝ち気な同級生Aが「チッ!」と舌打ちするのをそのヤンキーは聞き逃さなかった。

 

「おい!まてお前ら!」

「いいよ、シカトして行こうぜ!」と言う同級生Aの忠告を無視して、

最後尾のキヨワな同級生Bが「は、はい・・・。」と受け答える。

「お前ら、なめてんのか!?」

「いいえ、すみませんでした・・・。」

キヨワな同級生Bは何もしてないのに、自転車を降り直立不動で謝り出した。

私は前方で、リアカー自転車からゆっくりと降りるヤンキーを見て目を疑った。

身長は160cmくらいで小学生の様なのに、頭はしっかりパンチパーマで剃り込みが入っていた。

アロハシャツ、白いボンタンスボン。

童顔なのにしっかりとした大人のヤンキーだった。

そしてよく見ると、前歯が一本抜けてなかった。

私はそれに気づいた瞬間、必死に笑いをこらえていると、

キヨワな同級生B(身長180cm)が歯抜けのヤンキーに、

想いっきりジャンプされながらビンタされた。

 

日常生活において、最大の危機のようでありながらコミカルなその光景。

次の瞬間、私たちは自転車を全力で漕いでその場から逃げた。

ビンタされて泣きそうな同級生をその場に置いたままである。

 

キヨワな同級生Bも少し遅れて必死についてきた。

ヤンキーは「待てよ!」と言い追いかけようとリアカー自転車を方向転換したが、

三輪なので小回りが利かずバランスを崩して転倒した。

 

スタートしてすぐにこんなハプニングが起こるなんて、

おかしくってみんな大笑い。同級生Bだけは半泣き。

そのとき、これだけでこの旅は大成功だと思った。

 

その後、館山に行くまではフェリーに乗ったり、パンクしたり、

途中で食べたかき氷でお腹を壊す奴がいたりと、なかなかおもしろい旅だった。

 

あのときFENでかかっていた曲。

Wishing(If I had a photograph of you)-A Flock Of Seagulls

写真が無いから、余計に脳裏に焼き付いて忘れられない瞬間がある。

みんな、あのヤンキーのことや、リアカー自転車のことは憶えているだろうか?

If I had a photograph of you

みんなで前歯に海苔の破片でも貼付けて。

記念写真でも撮れば良かったか?